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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2023年2月号 ( Vol. 15, No. 8 )
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本号では IEEE BigData 2022,iiWAS 2022,ICADL 2022 の3件の国際会議の参加
報告をご寄稿いただきました.それぞれの会議の様子や招待講演の内容,ご自身が
発表された研究内容などについて紹介していただいております.ぜひご覧いただけ
れば幸いです.

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容
についてのご意見がございましたらnews-com[at]dbsj.orgまでお寄せください.

                                         日本データベース学会 広報委員会
                                               (担当編集委員 伊藤 寛祥)

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目次
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1. IEEE BigData 2022 参加報告
落合 桂一(NTTドコモ)

2. iiWAS 2022 参加報告
Savong Bou(筑波大学)

3. ICADL 2022 参加報告
渡邉 真悟(筑波大学)

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■1■ IEEE BigData 2022 参加報告
                                                     落合 桂一(NTTドコモ)

2022年12月17日から20日までの4日間,大阪とオンラインのハイブリッドで開催さ
れた IEEE International Conference on Big Data 2022 (IEEE BigData 2022) に現地参加
しました.参加者は,現地参加724人,オンライン参加497人の合計1221人でした.
IEEE BigData は IEEE が主催するビッグデータを対象としたデータベースやクラウド
システムなどの基盤,データマイニング,機械学習応用,アプリケーションなど
様々なトピックを対象とした国際会議で,2013年に初めて開催され,例年採択率
が20%以下を下回る難関国際会議です.今回は Full Paper の投稿数が633件で,その
うち122件が採択(採択率 19.3%),Short Paper は118件採択されました.

私は主著で本会議に Full Paper が 1件,共著で Human-in-the-Loop Methods and Future of
Work というワークショップに論文が1件採択されました.Full Paper に採録された
論文は「Encouraging Crowd Avoidance Behavior using Dynamic Pricing Framework
Towards Preventing the Spread of COVID-19」というタイトルで,「Big Data Applications」
というトピックに投稿し採録されました.余談ですが,トピック別の採択率も公表
されていて,「Big Data Applications」は採択率14.6%だったのですが,「Big Data
Learning and Analytics」が最も採択率が高く41.4%,一方,「Big Data Search and
Mining」が最も採択率が低く12.0%とトピックごとに採択率にばらつきがありました.

採録された研究は九州大学との共同研究で,新型コロナの感染拡大防止に向け店舗
の混雑状況に応じて dポイントを進呈することで混雑回避行動を促すことができる
かという行動変容に関する研究でした.BLE を活用して店舗の混雑を計測し,その
混雑状況に応じてダイナミックプライシングの枠組みを活用することで進呈ポイント
数を変動させます.九州大学伊都キャンパスにおいて食堂の混雑緩和を事例として
検証しました.技術的な課題としては,ダイナミックプライシングにおける需要
予測の部分で,緊急事態宣言の有無によって大学周辺の人出が大きく変動し,その
結果として需要が大きく変わってしまうことがありました.そこで,大学周辺の人口
変動をモバイル空間統計という携帯電話ネットワークの仕組みを活用して作成され
る人口統計データを使い把握し,需要予測モデルのロス関数を重みづけすることで
需要予測の精度を向上させました.

次回の開催場所はまだ決まっていないようで,クロージングのセッションで「See you
in IEEE Big Data 2023 (in Europe?)!」とアナウンスされていました.興味を持たれた方
はぜひ投稿をご検討ください.

(落合 桂一  NTTドコモ)

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■2■ iiWAS2022 参加報告
                                          Savong Bou(筑波大学)

2022 年 11 月 28 日から 30 日にかけてオンラインで開催された The 24th International
Conference on Information Integration and Web Intelligence (iiWAS2022) に参加しま
した.本来はイタリアのバリで開催予定でしたが,COVID-19の影響によりオンラ
インでの開催となりました.iiWAS は,研究者や業界関係者が情報統合や Web
インテリジェンス関連のすべての分野からの新しいアイデア,独自の研究結果,
実践的な開発経験を共有する主要な国際会議です.iiWAS 2022 は,Web Applications
Society (@WAS) によって承認されており,モバイルコンピューティングとマルチ
メディアインテリジェンスの進歩に関する第 20 回国際会議 (MoMM2022) と併せて
開催されました.iiWAS の議事録は,2021 年まで ACM によって公開されていまし
たが,2022 年からコンピューターサイエンスの講義ノート (LNCS) で Springer に
よって公開されます.

iiWAS 2022 には,31 か国から 97 件の応募がありました.厳格な審査プロセスの
後,26 のフルペーパーと 25 のショートペーパーが採択され,通常のペーパー
カテゴリの採択率は 25% になりました.最優秀論文賞は,早稲田大学の Eint Sandi
Aung 氏と Hayato Yamana 教授の論文「Hybrid Phishing URL Detection Using Segmented
Word Embedding」に贈られました.提出された論文の主な研究対象は,人工知能と
機械学習でした.採択された論文は,IoT,仮想現実と拡張現実,さまざまなビジネス
アプリケーションなど,さまざまな分野における進歩と革新を示しています.

今年は,イタリアの the Free University of Bozen-Bolzano の Antonio Liotta 教授,エスト
ニアの Tallinn University of Technology の Janika Leoste 教授,ポーランドの Poznan
University of Technology の Robert Wrembel 教授 の 3 人の著名な基調講演者が出席
しました.Antonio Liotta 教授は,スマートシステムにおけるデータ品質向上のため
の組込み機械学習について講演を行いました.Robert Wrembel 教授は,データ統合,
クリーニング,および重複排除の研究対現実について講演を行いました.Janika
Leoste 教授は,Are Telepresence Robots Here to Stay について講演を行いました.

また,韓国の Gachon University の Won Kim 教授が主催し,世界的に有名なスピーカー
による第 2 回ワールド ABC (Artificial Intelligence and Big Data Convergence) フォー
ラムも開催しました.

iiWAS 2023 は,2023 年 12 月 4~ 6 日にインドネシアのバリで開催される予定です.

(Savong Bou  筑波大学)

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■3■ ICADL 2022 参加報告
                                                    渡邉 真悟(筑波大学)

2022年11月30日から12月2日の3日間で開催された ICADL2022(The 24th International
Conference on Asia-Pacific Digital Libraries)に参加,および研究発表を行いました.
ICADL はデジタルライブラリ分野の学会で,データベース分野とも関わりが深い
会議の1つです.一昨年,昨年の ICADL はオンラインのみでの開催でしたが,今年
の ICADL は2年ぶりにベトナム・ハノイでの現地とオンラインのハイブリットで
開催となりました.ハイブリット形式のため,現地でのプレゼンテーションや
リモートでの発表,また事前に録画されたプレゼンテーションビデオなど様々な
方法で口頭発表が行われました.ICADL2022 では14本の full paper,18本の short
paper,12件のポスターが発表されました.

口頭発表では,Data Archive & Management や Cultural Data Collection and Analysis と
いった人文系のセッションから Intelligent Document Analysis や私が発表をおこなった
Smart Search and Annotation といったコンピュータサイエンス系のセッションまで
あり,多種多様な論文が発表されました.また,ポスター発表では室内だけでなく
屋外にも発表スペースが設けられ,会場の自然に囲まれながら開放感のある発表
が行われていました.

私は「Bibrecord-based Literature Management with Interactive Latent Space Learning」
というテーマで発表を行いました.研究者の管理しなければいけない論文の数は
膨大ですが,既存の文献管理の方法では管理する文献の数が増えてきたときに,
一貫した基準で文献を管理し続けることが困難であるという問題からこの研究の
着想に至りました.本研究では,文献を2次元空間に配置し,提案された位置に
対して研究者が位置を動かすというフィードバックを与える,インタラクティブ
な文献管理手法を提案し検討することを目的としています.私が発表したセッション
は発表者の現地参加の割合が高く,会場に多くの人が集まり質疑も活発に行われ
ていました.私の発表も多くの方に聞いていただき,熱心に質問もしていただき
ました.初めての国際会議での発表ということで,緊張や不安はありましたが
とても良い経験ができました.

また,本研究は幸運にも Best Student Paper Award を受賞することができました.
私自身,査読なしの国内学会で論文が採択されたのみで,初めて国際会議に論文
が採択され喜んでいたところ,このような賞まで頂くことができ,非常に光栄に
思います.論文を投稿するにあたり,研究について議論する場を毎週のように設け
てくださったり,また,締め切り間近にはどのようにしたら本研究のインパクト
や Novelty が伝わるかなどを長時間に渡りアドバイスや添削をしてくださった森嶋
先生,松原先生,伊藤先生には非常に感謝しています.加えて,研究の相談に乗
ってくれた研究室のメンバーや,評価実験のための被験者実験に協力してくださった
大学の先生方にもとても感謝しています.ありがとうございました.

2023年のICADLについて詳細な日程などはまだ発表されていませんが,台湾で
開催されることが予定されています.COVID-19の流行が落ち着き2023年もハイ
ブリット形式も駆使しながら台湾で現地で開催されることをこころより願って
います.

(渡邉 真悟  筑波大学)

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